2019年体験・実践作文入賞作品を紹介します。今回はかいり、みきがそれぞれ第2位、第3位に選ばれました。おめでとう!!
僕は、父と兄が稽古をしている姿を幼い頃から見ていて「かっこいいな。」と思っていました。手拭いを帽子被りし、飾り竹刀を道場の隅で振って真似していたのを今でも覚えています。
幼稚園年長の時、
「いつから僕もできるのかな。」
と父に尋ねたことで剣道人生が始まりました。大きな声を出し、ひとつずつできることが増えて楽しかったし、父や兄と同じように剣道着を着れることが嬉しかったです。
小学一年生で初めて試合に出場することになりました。防具は着けず、基本の打ち込みをする試合です。二年近く基本をやっていた僕は自信がありました。そして、試合前日。母から、
「明日は頑張ろうね。絶対優勝できるよ。」
と励まされて、より一層力が湧いてきました。しかし、結果は三位。賞状を手にしても、悔しい気持ちで一杯になりました。母は、
「よく頑張ってたよ。三位でもすごい。」
誉めてくれましたが、この日から、試合前に絶対という言葉は使わず、
「全力で向っていきなさい。」
と励まし方が変わった気がします。そして、初めて味わった悔しさは恐怖心にも繋がり、
「もう試合は嫌です。稽古だけしたいです。」
と言い出した僕に先生は、
「分かった。その代わり誰よりも必死に頑張ること。」
とだけおっしゃいました。自分のわがままを勝手に話したことに両親は驚いていましたが、僕はホッとしたような気持ちだったことを今でも覚えています。
再び試合に出ることになりましたが、負けてばかりで散々な結果でした。しかし、以前とは違い、「なぜ勝てなかったのか」「何が足りなかったのか」と相手との比較をし、ひとつずつ課題をクリアするよう稽古に打ち込みました。試合当日は早起きをし、木刀を振りながらイメージを膨らませて挑むようになり、少しずつ結果が出るようにもなりました。
そして、小学五年生で県大会個人戦出場。ここで勝てれば表彰台に上がれるという時、延長戦で敗れベスト8で終わりました。久しぶりに味わった敗北感。悔しいだけでなく、有頂天になっていた自分にも気づかされた一戦でした。「人並みの努力ではなく、きっと想像を超える努力と失敗を繰り返してきた剣士だけが表彰台に上がれるということなんだ。」試合のビデオを何十回も見直し、自分の中で答えが出てきました。
「今までの環境を変えて一からやりたいです。」
と両親に話し、何度も話し合いました。
中学生になった今、中学部員一人で高校生と一緒に稽古をさせてもらっています。全国大会優勝を目標にしている中での稽古に毎日必死についていっています。勉強との両立、体力がきつい時もありますが、先輩方が弟のように励まし、アドバイスをしてくれるので、一人部員でも幸せな環境での稽古だと思っています。目標を高く持ち、そこに繋がる様々なことを想像し、意識した稽古を続けていくことでいつか結果が出ると信じています。
「一回の稽古は紙一枚。重ねていくと積み上がり、見上げられるようになると少し自信もついてくるかもしれない。」
年長から始めた剣道の紙は、今、どの位の高さになったのだろうか。